遠い世界に旅に出ようか

音楽の教科書で知っている人がいるかもしれませんが、「遠い世界に」という歌が昔ありました。私が大学時代に在籍したユースホステル同好会のテーマソングでした。最近、自分自身旅に出たいと思うようになりました。旅のノウハウ、特に海外旅行に関して、いまさら聞けないような基本情報から深堀情報まで、自分なりに調べた結果を具体的にまとめて記録・保存したいと思いこのブログを立ち上げました。これをきっかけに旅に出る人が増えたらうれしいです。

飛鳥Ⅲ? ピースボートのエコシップは?

エコシップが日本のクルーズ船にも採用されます。エコシップの中身を深堀してみます。

今回は、ちょっと技術的な内容が多くなります。

難しい言い回しが出てくるかも知れませんが、ご容赦ください。

 

【エコシップとは?】

エコカーという言葉があります。環境に配慮し、省エネを実現する自動車ですが、船にも同様にエコシップという言葉があります。

環境負荷を低減(NOX、CO2、PM等)させ、燃費性能を高める技術が盛り込まれた船のことを指します。(燃費向上の手段は広範囲にわたります)

近年、船にもCO2の削減が要求されるようになってきており、規制も段階的に厳しくなってきています。これに対応する形で、クルーズ船にもエコシップ化の波が及んできています。

 

【クルーズ船のエンジンの歴史】

EV(電気自動車)がそうであるように、電動モーターで推力を得る技術は、最近始まったものではなく、100年以上前から存在しました。

19世紀前半にはモーターの原型が発明されたことで、船のスクリューもそれで回そうと考えるのが道理です。

しかし、効率や様々な技術的課題山積で、他の動力機関に後れを取り、特にクルーズ船での電気推進(モーター駆動)の採用は主流にならないまま、蒸気タービンの時代が続きました。

 

 

モーターの特徴は、静粛性です。そのため、電子制御技術がある程度実用レベルに達した1980年代にようやく、高級大型クルーズ船の一部にディーゼル電気推進システム(ディーゼルエンジンで発電し、その電力でモーターを回す)が搭載されるようになりました。その代表格が、クリーンエリザベス2でした。

それまでの蒸気タービンの代わりに9基のディーゼル発電機と大きなモーターが搭載されました。これによりクイーンエリザベス2はそれまでにない静粛性を得られ、超級クルーズ船として君臨しました。

ただし、初期費用・維持費用など様々なコストが高くつき、静粛性と引き換えにどれだけお金をつぎ込めるかの厳しい経営判断を迫られることになりました。

一般的なディーゼル発電機

90年代になると経済性が向上した新世代型電気推進システムが急速に普及し始め、クルーズ船だけでなく、他の船種にも採用されるようになりました。

これは、90年に電気推進システムを搭載して就航したカーニバル・クルーズの大型クルーズ船ファンタジーの功績が大きかったといわれています。

そして、わが日本の誇る飛鳥Ⅱの前身であるクリスタル・ハーモニーも90年に電気推進式のクルーズ船として就航しました。

その後、アジポッドと呼ばれる画期的なアイデアが開発され、カーニバル・クルーズがイレーションで採用しました。

 

カーニバル・クルーズのイレーション

アジポッドにより、消費電力の変化への対応、小回りの利く操作性、騒音・振動の低減、速度変化への対応等が向上し、経済性が大きく改善されました。

船の構造も単純化し部品点数の削減等により、船内設計に余裕ができ、建造時間も短縮可能になりました。

アジポッドあるいは同様のシステムは、大型クルーズ船の主流となりました。そんな中で、次にエコシップが求められる時代がやってきたのです。

 

【飛鳥Ⅱの郵船クルーズが新造船】

あの飛鳥Ⅱを所有している郵船クルーズ社ですが、同社としては34年ぶりの新造船が発表されています。2025年に就航予定です。

新造船でぶー

名前は「飛鳥Ⅲ」になるのかどうか、未だ決まっていません。

また新造船が就航する段階で、今の飛鳥Ⅱの処遇がどうなるのかもわかりません。2隻が同時に航海に出ることも考えられます。

新造船は5万1950トンとなる予定で、現状の「飛鳥Ⅱ」(5万444トン)とほぼ同じサイズになりそうです。ただし、乗客定員は飛鳥Ⅱの827人から740人と約85パーセントに減らして、一人当たりのスペースに余裕を持たせる設計になっています。スペースレシオ(総トン数÷定員)が70.2トンとなり、最高級として高い評価を受けているドイツのラグジュアリー客船「オイローパ」(2万8890トン)とほぼ同じ広さに該当するそうです。さらに全室バルコニー付きになるそうです。すばらしいですねぇ!

ただ、これで逆に気になるのが、旅行代金です。飛鳥Ⅱよりもさらに上がってしまわないか心配です。飛鳥Ⅱでも十分高くて、一般人にはなかなか手が出ないのですが、新造船がもっと高くなると、いよいよ雲の上の存在になってしまいます。

クルーズ代金に関して、郵船クルーズの坂本社長は「ラグジュアリーなサービスを提供することで、それがクルーズ代金に反映されることもあるかもしれない。」と値上げを肯定するような回答もしています。う~ん、やっぱり上がるのでしょうか・・・

新型コロナの影響でリモートワークが増えていますが、新造船では、船内Wi-Fiを充実させ、「仕事と余暇を両立する、いわゆるワーケーションを実現できる船になる。仕事をしながら世界一周クルーズができるようになる」とも表現していました。世界一周クルーズをしながら、寄港しているときは観光、終日船の中にいるときはリモートで仕事なんて優雅な働き方ができるようになるのかもしれません。

顧客ターゲットは日本人で、「和のおもてなし」を基本として、露天風呂を新造船にも設けるそうです。これにより逆に「和」を求める外国人にも受け入れられるのではないかという期待もあるようです。

また、飛鳥Ⅱよりも喫水(水面から船底までの距離)が浅くなるため、寄港地が増える可能性もあります。

飛鳥Ⅱとほぼ同じサイズにしたのは、飛鳥Ⅱレベルのきめ細かなサービスを実現するためということで、あまり大きくなると、サービスが雑になるという考え方なのでしょう。やはり郵船クルーズは、高級ラグジュアリー路線を維持し続ける経営方針にブレは無いようです。

 

コロナ禍にこのような大型投資に踏み切った背景には、コロナ前のクルーズ人気の上昇と、まだまだ伸びしろのある市場だということを、各金融機関も理解しているからだと言われています。これは、復活後の飛鳥Ⅱの予約もすぐに満席になってしまう状況をみると、当たっていると思います。

 

【新造船はエコシップ】

郵船クルーズの新造船は、環境に配慮するために、液化天然ガス(LNG)燃料、低硫黄燃料、ガスオイル燃料の3種の燃料に対応するデュアル・フュージョン・エンジンを搭載しています。それほど大きくないこのサイズの船では世界初だそうです。これにより環境規制が厳しい地域も航行できるようになります。

ほかにも、日本客船としては初めて陸上電源を利用できるようになっています。これは寄港した際に、船内への電気を陸上から供給するためのものです。利点として、寄港している際に船のエンジン(発電機)を停止させることができ、一般的に効率のいい(コストの安い)電気を陸上から得ることができます。陸上からの電気がクリーンエネルギーであれば、さらに環境にやさしいということになります。

今回の新造船はドイツのマイヤーベルフトという造船所で造られるそうです。技術的、経験的なところで決まったようですが、日本の造船所ではないのがちょっと残念です。

 

新造船の完成イメージです。

順番に、プールデッキ、フォーシーズンズダイニングルーム、ロイヤルスイートダイニングテーブルです。

環境に配慮した点はすばらしいのですが、以上のような状況から考えると、造船のコストが多少上がるのは否めません。やはり、新造船のクルーズ代金が最も気になるところです。

高級ラグジュアリー化に磨きをかけた新しい郵船クルーズ船、2025年、あと少しで見ることができます。期待したいと思います。

 

【ピースボートのエコシップ】

ピースボートは環境問題にも大きく関わっているNGOですから、エコシップにも積極的に動いています。

ピースボートはこれまで外国船をチャーターすることで、クルーズを企画してきました。しかし、次世代のエコシップは、自分で所有することを目指しています。

下のイラストを見ると、郵船クルーズのエコシップと比べて先鋭的で、いかにもエコシップと言える姿をしています。

この船の特徴は、太陽光発電などで二酸化炭素の排出を約4割軽減できる点です。

まず目に入るのが8本の大きなマストです。風を動力にと書いてあることから、帆船の機能を持っていると考えられます。このマストが風の向きに応じて回転する構造になっています。そしてそのマストには、太陽光パネルが設置されています。この面積だとまだまだ発電量は不足ではと感じてしまいます。また帆と兼用されるため、軽量化をかなり頑張る必要があると思います。風による推進力、太陽光による発電で、本来の航行の何パーセントを省エネ化できるのか手元資料では詳細はわかりません。やはり、LNGを主要燃料として発電機を動かすことでモーター/スクリューを回すことによる推進がメインになるものと考えられます。

 

外観も内装も、本当に夢のあるデザインです。

インフィニティプール

メインダイニング

シアター/ステージ
これだけ豪華だと、まず気になるのが建造費です。このようなデザインで環境を守るために払うコストは相当高くつくと思われます。

報道から、建造費は570億円とも言われています。NGOであるピースボートにそんな資金は無いはずです。これはクラウドファンディングやその他の基金、個人投資家から募るそうです。大丈夫なのかなとちょっと心配になります。

新しい客船の国際安全基準に適合するよう仕様変更の必要が生じたため、日程が大幅に遅れることが発表されました。その時にも、資金繰りが行き詰ったのではとか噂されまた。造船を依頼したチエルアークテック・ヘルシンキ造船所は、コロナの影響で操業できない期間が続き、それも遅れの原因になっています。

ではいったいいつピースボートのエコシップが就航できるのでしょうか?

ピースボートのホームページには、2027年にエコシップを使用した世界一周クルーズの募集が3本掲載されています。すでに多くの人が予約していることから、ここがまずはターゲットかなと思っています。

 

その他、MSCも初のエコシップを発表しています。

これから、次々に夢のあるエコシップのクルーズ船が登場し、私たちを楽しませてくれるものと思います。

エコシップで世界一周クルーズ旅行する日を期待して待ちたいと思います。

 

ピースボートのクルーズ

ときどき居酒屋などの壁に「世界一周クルーズ、99万円」なんてポスターが貼ってあるのを見たことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか?

普通のクルーズ船の費用に比べて半分以下です。

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この世界一周の船旅を企画しているのが、「ピースボート」です。
ピースボートと言うのは船や船会社の名前ではなく、クルーズ旅行を企画しているNGOの名前なのです。

えっ、なんで世界一周クルーズを提供しているのがNGOなの?という疑問がわくかと思います。私もその一人でした。

クルーズ船による世界一周旅行は、あこがれはあるものの、お金持ちの老後の癒し旅行・・・なんて言われたりもします。時間とお金に余裕がないとなかなか参加できませんからね。

しかし、ピースボートが企画する世界一周旅行は、一般の人にも手が届きそうな価格で提供されています。これってもしかしたら何か裏があったり、ヤバいことがあったりするんじゃないの? なんか怪しい~、なんて思われる人も少なからずいるのではないでしょうか?

 

旅行内容を確認する前に、まずピースボートって何なの?という部分から探ってみました。

Wikipediaによると、

ピースボート(Peace Boat)は、国際交流を目的として設立された日本の非政府組織(NGO)、もしくは、その団体が企画していた船舶旅行の名称である。設立当初はアジアをめぐるクルーズの企画を主体としていたが、1990年以降は世界各地を巡る「地球一周の船旅」を繰り返し行っている。

となっています。

そして、設立(1983年)メンバーには、政治家の辻本清美さんが名を連ねています。当時早稲田大学に在籍中で、主要メンバーとして活躍されていたそうです。

ただ現在はピースボートとの関係は無くなっています。

設立当時、教科書問題が話題になっており、その実地検証する目的などで、青少年主体で世界中の市民と交流しながら、世界平和や地球環境問題などのテーマを掲げて船旅を企画実施してきました。たしかに以前はかなり政治的な船旅もあったようです。

ピースボートは、特殊諮問資格をもっているので、国際会議などでも発言できる組織なのです。

さらに、現在共同代表になっている川崎哲さんは、参加している核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)として、2017年度のノーベル平和賞を受賞しています。

 

このような話を聞くと、豪華で優雅なクルーズ船旅行からどんどん遠ざかっていく感じがしますが、そんな生い立ちがありながら、今でもピースボートは多くのクルーズ船旅行を提供し続けています。特に世界一周クルーズ船旅行を年に3回も企画するほどなのです。(飛鳥Ⅱの2023年の世界一周クルーズは1回のみの予定です)

 

ピースボートには、設立背景や政治色が見え隠れすることから、政治的な洗脳が行われるとか、宗教団体だとか、巷ではいろんな噂が流れていることも事実です。

 

結論から申し上げると、私が調べた範囲では、現在のピースボートが企画するクルーズ船旅行には、そのようなことはなく、安心して参加できるツアーだと考えられます。

 

ではなぜ、他のクルーズ船よりも安価な旅行が提供できるのでしょうか? 

一言でいうと、学生などの若い人たちの力を借りているからです。

冒頭にも紹介した世界一周の船旅ポスター。これも旅行に参加したい若者がアルバイトとして貼っているのです。3枚貼れば千円がもらえます。しかし、ただ貼るのではなく、店などに内容を説明し、承諾してもらわなければなりません。そう考えると、そんなに簡単なアルバイトではないのかもしれません。

その他にもスタッフとしての仕事を手伝ったりすることもあるようです。

外国語が堪能な若者は、通訳として活躍することもあります。

そして、彼らがクルーズ船で旅行する際の部屋は、ホステルのような相部屋なのです。

(写真を見ると、昔のユースホステルよりはずっときれいな部屋のようです)

 

ピースボートが提供する船旅の特徴は、若者が多く参加しているところです。

一般のクルーズ、特に世界一周ともなると、ほとんど年配の乗客が占めます。しかしピースボートでは、二つの世代が同じ船で旅行を楽しむ光景が見られます。

 

デメリットもあります。

ピースボートの船には、プロのクルーもたくさん乗船していますが、しろうとの若者がその中にスタッフとして入ったりすると、やはりプロのサービスにはかないません。

特に飛鳥Ⅱを筆頭とする日本の3隻のクルーズ船の一流のサービスと比較すると、かなわないのはしかたありません。

ポイントはそこを許容できるかどうかです。

 

こちらは、ピースボートの2023年4月に出発予定の北極航路 ヨーロッパ&中米コース108日間の旅行代金です。

(二人で申し込んだ場合の一人分の旅行代金)

最高級のバルコニースイートが約700万円です。

ジュニアスイートで、560万円。

日本の高級クルーズ船だったら、ワンルームの安い部屋の金額です。

個人的には、この金額でもまだ手が届きません。

 

スイートでなければ、このような金額になります。

なんとなく、手の届く領域に近づいてきた気がします。

これなら頑張れば・・・という気になります。

ちなみにアウトサイドというのは、窓はありますが、バルコニーがないタイプです。

エコノミーとバジェットは船の内側の部屋で、窓がありません。

 

使用される船は、以前にも紹介しましたが、パシフィックワールド号をチャーターしています。

サン・プリンセスと呼ばれていたころから、日本発着のクルーズに使用されていました。

2019年にはJTBが主催した98日間の世界一周旅行にも使用されました。

飛鳥Ⅱを上回る7万7千トンの大きな船です。

ピースボートクルーズ公式サイト

 

そして、2027年には、「エコシップ」を使った世界一周クルーズが始まるそうです。


エコシップ?

簡単にいうと、エコカーの船版です。

さまざまな省エネ技術を採用して、環境に配慮した船ということです。

こちらが、2027年からピースボートで使用されるエコシップです。(当初の導入予定からは遅れたようです)

なんか未来的でかっこいいですね。

部屋はこんな感じになるそうです。

上の二つは豪華すぎます。

相部屋はちょっと無理なので、このくらいがいいかなと、勝手に想像したりしています。


まとめますと、ピースボートは一般のクルーズ会社とは異なる生い立ちがあり、いろんな噂も流れていますが、現在は、安くてリーズナブルな世界一周クルーズ船旅行を提供してくれています。

飛鳥Ⅱなどのような超一流サービスは期待せず、一定のレベルで許容できる場合は、検討の候補にいれていいかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

日本のクルーズ船+世界最大のクルーズ船

今回は日本のクルーズ船の紹介と、比較の意味で参考に世界最大のクルーズ船も紹介します。

※世界一周クルーズが可能なレベルの大型客船は、日本に3隻あります。

 

★飛鳥Ⅱ

まずは、日本が誇る高級クルーズ船【飛鳥(あすか)Ⅱ】です。日本籍では最大の客船です。

日本郵船の関係会社、郵船クルーズが所有・運航している外航クルーズ客船です。乗客定員(872名)と乗組員(約470名)総トン数は5万トンを超えています。日本で初めて建造された電気推進のクルーズ船です。

「5万トン」「1000人」という数字を覚えておくと、これを基準にして、大きい小さい・・・等の基準になるかと思います。

ちなみに映画でも有名な「タイタニック号」は4万6千トンでした。飛鳥Ⅱとだいたい同じですね。

初代、飛鳥は、2006年にドイツの会社に売却されバハマ船籍となり、改名してバルト海を中心に就航しています。

2代目の飛鳥Ⅱは1990年、日本郵船の関連会社のクルーズ客船「クリスタル・ハーモニー」として三菱重工業長崎造船所で竣工されました。その後、初代飛鳥の後継として増える需要に対応するために、2006年に郵船クルーズがこの船を買い取り日本市場向けの改装を施し、3月に正式デビューしました。すべての客室が窓側に配置されており、日本人向けの高級クルーズ船としてカスタマイズされました。

日本最高の名にふさわしく、設備もサービスも超一流です。

非常に人気のある船で、企画されたツアーはすぐに満席になるほどです。

飛鳥Ⅱを利用した世界一周クルーズは、別途詳しく紹介しようと思っています。

 

★にっぽん丸     

  次に【にっぽん丸】です。現役のにっぽん丸は3代目になります。

初代は、1958年竣工で、総トン数約1万トン、定員431人でした。

飛鳥Ⅱの5万トンに比べるとかなり小ぶりです。

1976年に老朽化に伴い2代目にっぽん丸と入れ替わり、1977年に解体されました。

2代目は、1962年にブラジルの客船として竣工しました。1975年に三井造船玉野造船所で改装され、パナマ船籍のまま商船三井客船が定期用船する形で「セブンシーズ」として運航しました。その後1977年に2代目「にっぽん丸」となりました。

大きさは初代とほぼ同じです。

そして、1990年に3代目にっぽん丸と入れ替わりました。引退後はインドネシアに売船された後、1998年にインドで解体されました。

3代目(現行)は、2代目にっぽん丸に代わる客船として、1990年に三菱重工業神戸造船所で建造されました。商船三井が運航するクルーズ船です。 

竣工は1990年9月です。総トン数は約2万トンと初代・2代目よりはかなり大きくなったものの、飛鳥Ⅱの半分以下です。

旅客定員は203室・最大532名(2020年大改装後) 乗組員は160名となっています。

飛鳥Ⅱに比べて、小柄ですが、そこを生かして、きめ細かいサービスと料理のおいしさで人気があり、「美食の船」とも言われています。

小さいとは言っても、このサイズは、クルーズ船としては十分で、逆に寄港地の選択肢が増えるという利点があります。船が大きくなればなるほど、接岸できる港が限られてきます。もちろん沖どめしてテンダーボートなどを使えば、上陸はできるのですが、やはり面倒です。

 

★ぱしふぃっくびいなす

 ぱしふぃっくびいなす (Pacific Venus) は、日本クルーズ客船(新日本海フェリーの子会社)が運航するクルーズ客船です。

総トン数は26,518トン、定員は720名、乗組員は204名となっています。

にっぽん丸より少しだけ大きいです。飛鳥Ⅱの半分くらいです。

前述の2船と同様、食事に関しては満足度が高く、水上の高級レストランと言ってもいいくらいです。

さらに、この船の特徴は、クルーのノリの良さです。日本人クルー・外国籍クルーみんな明るくてフレンドリーです。

長い航海でしょっちゅう顔を合わせるクルーたちの笑顔が素敵だったら、クルーズでの生活もさぞかし楽しくなると思います。

 

日本の大型クルーズ船は、以上3隻になります。

 

★ピースボート

ピースボートは船の名前ではなく団体名です。

これは、クルーズ旅行を企画している日本のNGOの名前になります。

企画運営のみを行なっており、船はチャーターです。

ピースボートの企画するクルーズを主催する旅行社として、株式会社ジャパングレイスがあります。ここは現在、ピースボートのクルーズのみ扱っています。

今は、外国籍の「パシフィックワールド号」をチャーターして運航しています。

この船は旧サン・プリンセス号のことで、2013年から日本のクルーズに利用されるようになり、2019年にはJTBが主催した98日間の世界一周旅行にも使用された大型クルーズ船です。

総トン数は、日本最大の飛鳥Ⅱを上回る7万7千トンもあります。

竣工当時は世界一だったそうです。

定員も約2千名となっており、かなり大きいです。

この船をチャーターして、安い価格で世界一周クルーズを提供しているのがピースボートです。

ピースボートに関しては、特殊な成り立ちと運営を行っているため、いろんな噂もまことしやかに語られているほどです。

ピースボートの詳細に関しては、別に取り上げようかと考えています。

 

※参考

★世界最大のクルーズ船   

【オアシス・オブ・ザ・シーズ (Oasis of the Seas)】

アメリカのロイヤル・カリビアン・インターナショナルが運航するクルーズ客船です。2009年に就航しました。

総トン数は22万5千トン、なんと飛鳥Ⅱの4倍以上です。

定員も最大6,300名と桁外れです。

植物が豊かな公園:セントラルパーク、水がテーマの:アクアシアター、アミューズメント施設:ボードウォーク、船上サーフィン、プール、アイススケート場、ミニゴルフ場 などの設備が備わっているそうです。

 

 

ついでに紹介しますが、世界10位にランクされているのが、日本でもお馴染みの【ダイヤモンド・プリンセス】です。

(2020年、新型コロナが発生したことで一躍有名になってしまいました)

11万6千トンで、これでも飛鳥Ⅱの2倍以上の大きさです。

ソース画像を表示

 

総トン数を基準に、各クルーズ船を並べてみました。

(全長で比較すると、かなり順位が入れ替わります)

これをみると、世界には大きなクルーズ船がたくさんあるのがわかります。

乗客の側からみると、大きければいいというわけではありませんが、船を大きくして定員を増やすことで、量産効果を生み、それにより一人当たりのクルーズ費用を安く抑えることができます。

その結果、より多くの人がクルーズに参加できるようになれば、乗客側も恩恵にあずかることになります。全体としてクルーズ人口が増え、ビジネスとして拡大していくことで好循環が期待できます。

 

日本の場合、ドル箱の首都圏発着のクルーズとなると横浜港に接岸するのが一般的です。しかしあまりに大きな船は海面上の船体の高さと海面下の深さがネックになり、接岸できません。横浜ベイブリッジの高さ等が影響しています。

大きくて有名な外国船の接岸により、東京観光にもいい影響を与えると思うのですが・・・

それに対し、鹿児島市のマリンポートは新岸壁が完成し、22万トン級と、16万トン級クルーズ船の同時寄港が可能になりました。観光客誘致が期待されています。

マリンポートかごしま全景

これはまさに世界最大のクルーズ船オアシス・オブ・ザ・シーズ と、人気のディズニー・ドリームが同時に接岸できるサイズです。

前にも書いたように、船だけが大きくなっても、港や港湾がそれに対応できなければなりません。観光客を呼び込みたいところは、大きな船が接岸できる港を整備する動きがこれからどんどん活発になると考えられます。

 

世界一周の旅「クルーズ船」だったら?

 

世界一周旅行といえば、代表的なのがクルーズ船です。

これと対極にあげられるのが、航空機を使う世界一周だと思います。

ここではまず、クルーズ船と航空機による世界一周旅行をざっくりと比較してみたいと思います。

 

まずはクルーズ船です。

クルーズ船による世界一周旅行の特徴

クルーズ船の世界一周旅行は基本的にツアー会社による催行が必須なため、移動は船、食事も船、行先もあらかじめ設定済みです。

すべてお膳立てができているのがクルーズ船です。

そのため、ストレスなく旅行をこなしていくことが可能になります。

反面、費用は一般的に高くなりがちです。ここが一番重要になるかと思います。

通常は200万円から、500万円くらい。部屋にもよりますが、広めのスートルームは2~3千万円します。

にっぽん丸スイートルーム

これは二人で一部屋を使った場合の一人分の費用になりますから、夫婦などのカップルで参加すると、この2倍の料金が必要です。

※この中には宿泊費や基本的な食費が含まれています。

 

日程は、船を使うために、100日前後かかるのが通常です。

ほとんどの時間が、船の中での生活になりますので、観光以外に船の中での生活を楽しめるかどうかが重要になります。限られた空間内での生活を楽しめるか、逆に苦痛に感じるかで、クルーズ船による旅の印象が180度異なる結果になるかと思います。

船での移動は時間がかかるので、観光に割ける時間は、全体日程の中で、2~3割程度です。

寄港地では基本的に1日(場合によっては半日)滞在するだけなので、30か所寄港しても、残りの70日間は船の中での生活になります。

英語の堪能な人は別として、普通の日本人ならば、日本で企画催行されたツアーに参加するのがいいかと思います。一部寄港地での観光を除いて、ほぼほぼ日本語のみで世界一周を完結することができるのも、クルーズ船による旅行のメリットと言えます。

 

これに対して、ちょっと航空機を使った場合も見てみましょう。

航空機による世界一周旅行は、ホテル滞在が基本になります。

航空券・ホテルはもちろん自分で決めるのが基本ですが、行く場所は世界中に無限にあり、その中から行きたい場所を見つけて、そのルートを考えるのが一番の醍醐味かと思います。

もちろん旅行会社による世界一周のパッケージツアーもないわけではありませんが、あまりに選択肢が多いので、既成のツアーには収まりきれないことが多くて、旅行会社としても商売になりにくいのではないかと思います。

したがって自分自身ですべてを計画実行するか、旅行会社と相談してプライベートツアーを設定してもらうことになります。世界一周を扱っている旅行会社は、世界一周堂、HIS、JTBなどがあります。クラブツーリズムは、ある程度人数が集まるのを条件に世界一周ツアーを販売していたことがあるようです。

若くて元気のある人は、バックパッカーのようにして、ホステルやAirbnbを中心に、野宿も含めてチャレンジするのもいいかと思います。私も若いころはよくユースホステルを利用していました。

ただ、私の目指している中くらいの世界一周だとすると、「世界一周航空券」を購入して、ホテル宿泊を手配して旅行するのがいいかなと思っています。

世界一周旅行券は、スターアライアンス・ワンワールド・スカイチームといった航空連合(アライアンス)、ないしは世界一周路線を有する航空会社単独で取扱いを行っています。このあたりは別の記事でアップしたいと考えています。

ワンワールドの世界一周航空券予約ツール

このように、航空機を使った世界一周の場合は、行く場所、ルート、移動方法、宿泊場所、食事など、いろいろなことを自分で決めて実行する必要があります。

それが苦労するところでもあり、楽しいところでもあるのです。

添乗員はいないので、旅行中に起きたトラブルも自分の力で解決しなければなりません。

費用はその分、クルーズ船よりも安く抑えることができます。

今回はクルーズ船がテーマなので、飛行機の旅はこのへんにしておいて、次は、クルーズにおける日本船と外国船の比較をしてみたいと思います。

 

日本船が外国船と最も違う点は、日本人に向けた設計がなされているということです。

日本船のターゲットは日本人客です。和室仕様の部屋があったり、大浴場があったりします。

それに対して外国船は、いろいろな国籍の人が利用します。そのため、一般的には欧米仕様になっています。当然ですが、商売なので、顧客に最適な仕様にすることが重要です。日本人ができるだけストレスなく世界一周を楽しめるのは日本船ですが、逆にせっかく海外に行くのだから、外国の文化や習慣に浸りたいというのであれば、外国船もいいかと思います。

次に、言語の問題です。日本船は、当然日本語が至る場所で通じます。しかし、外国船は基本的に英語です。外国船でも日本人客をターゲットにした船、ツアーもあり、そんな船はある程度日本語が通じるようにはなっています。しかし、日本船ほどではありません。やはり英語を使う機会が多くなると思います。

私が以前乗ったことのあるクルーズ船は、一部日本人向けに切り売りされていましたが、参加した日本人は十数人で、残りは全部外国人だったため、避難訓練や、ショー等の催し物、レストランなど、すべて英語が必要で、けっこう疲れました。

外国船をまるまるチャーターして、オール日本人向けのツアーにするケースもあります。その場合でも、クルーは外国人がほとんどで、彼らとの会話は英語が中心になります。

外国船にはそれなりの楽しみ方もあります。様々な国の乗客が参加しており、食事で同席したり、いろいろな場所で、多くの外国人と接し、会話する機会があります。英語が堪能な人なら、外国人とのコミュニケーションを楽しめるいい機会だと思います。

食事も、メインのターゲット顧客に合わせているため、日本船の方が、日本人の口に合います。最近は外国船にも寿司レストランがあったり、日本人コックが乗船していたりしますが、やはり欧米人のお客さんが中心だとそちらに合わせた味付けになってしまいます。

日本船の食事は、どの船も非常にレベルが高くて、贅沢な旅が味わえます。多くの人がダイエットを気にする必要が出てくるほどです。

船の大きさの違いによる原因ですが、日本船の方がレストランの数や種類が少ない傾向にあります。外国船は大きな船が多く、そのぶん、レストランの種類やメニューも多岐にわたっています。ただ、日本船でも個人字的には十分かと思います。

日本船は日本を船籍としており、母港が日本です。旅のスタートと帰着は日本になっているので、自宅から宅急便で荷物を送ることができます。世界一周となると荷物が多いので、このサービスは助かります。

一方外国船(まるまるチャーターを除く)は、フライ&クルーズ(クルーズの発着港まで飛行機で行き、乗船してクルーズ旅行を楽しむ方法)がベースとなっているため、航空機の預け荷物として荷物を持ち込む必要があります。国際宅配便で送る場合は、料金が高かったり、手続きが面倒だったりというデメリットはあります。

【そして、一番重要なのが、旅行の費用です。】

クルーズ船の費用は、基本的に1泊当たりの費用で計算されます。

1泊当たり(1室2名利用時)5万円/1人の部屋だったら、世界一周100日コースの場合、約500万円かかるという計算になります。それにオプショナルツアーやらアルコール代、その他いろいろな費用が追加されます。

オプショナルツアーは日帰りか半日コースで、2万円前後、1万円台後半が多いようです。

価格は、日本船が外国船に比べて高い傾向にあります。

外国船を利用した日本人向けクルーズツアーが入ってきたときには、「価格破壊が起きるのでは?」と言われたことがあったほどです。大きな船を利用して乗客を大量にさばき、クルーも多国籍の比較的安い労働力を多く使っている外国船は、どうしてもコストメリットにまさります。

高級感がある旅行を楽しみたいという日本人客が多いためか、日本船は外国船とコスト競争するのではなく、高級志向で満足感を優先し、リーピート客を期待するような差別化を図る方向なのかなとも受け止められます。

 

次回以降は、もう少し、いろんなクルーズ船や、クルーズ旅行に関して掘り下げていこうと思います。